小説を書く時、物語を書く時には、あえて直接的なことを書かないで読み手に想像してもらう、という書き方をすることがあると思います。
人間の脳は素晴らしいもので、ヒントだけ与えられれば自分の理想形に近いものを勝手に想像してくれたりします。
この素晴らしい機能があるおかげで、直接言葉にするよりも、より物語の雰囲気やなんとも言えない感覚を生み出すことができるわけですね。
これは漫画やアニメ、映画など映像作品では作れない点の一つです。
曖昧さ? 正確さ? どちらが脳を刺激する?
しかし、セールスコピーライティングの本などを読むと、売り込むものを伝える時にはできる限り明確に、はっきりとわかるように書きなさい。
というように書かれているものが多い気がします。
例えば、多くの事例では……ではなく、12件の事例から
20種類以上のピザを用意……ではなく、27種類のピザがあります
国産の小豆を使用……よりも、北海道産十勝の小豆を100%使用
などのような書き方です。
どうしてこのような書き方が推奨されるのでしょう?
一つめの理由としては疑問を持たれないようにするため。
ある機関の調べによると……
と書けば、それってどこの機関? 信用できるかどうかわからないじゃん!
となりますね。でもこれが
厚生労働省の発表によると……とあれば信憑性は一気に高まる。
それに明確に書くことで、物事の輪郭がはっきりしてくる印象があるし、頭にも浮かびやすい。
ぼやとした表現では、頭に浮かんできにくいのです。イメージが浮かびにくいものは、印象も薄くなる……一説によると(この言い方がすでに曖昧ですけど)、脳の原始的な部分は明確な表現の方が信じ込みやすいのだとか。
明確さは物語にも必要か?
では、物語を書く時はどうでしょう?
主人公はどんな人物で、どんな格好で、どんな場所にいるのか?
寒いのか、暑いのか、空腹なのか、今見えているものは? 風は吹いているのか?
その風が吹いてくる方向はどちらか? などなど
確かに、具体的に明確に書けばより頭に浮かぶ感じがします。
でも、小説などを読んでいるとそれがリアリティーにつながっている場合と説明が煩わしいと感じる場合もありますよね。そんな時は、おそらく「書きすぎ」なんですよね。
相手の読みたいものとあなたが読ませたいものは何か?
あなたは読み手に何を伝えたいのだろう? 読み手は何を読みたくてその文章を読むのだろう?
コピーだったら、商品の説明だろうか? たぶん、そういう人はあんまりいない。商品の説明よりも、それによって得られる何か、自分に起きる良い変化の物語でしょう。
小説や物語だったら爽快感、達成感、主人公の成長、事件を追うドキドキ感、異国を旅するワクワク感、思わず頬の緩む人間関係、スリルのある駆け引き、自分には縁のないようなセレブな気分……などなど、決して世界観だけの説明ではない。それは上記の読みたいもののエッセンスにすぎないはずです。
何を明確にして、何を削るのか? 読み手のことを考えてそれを選定しましょう。そうすれば、あなたの伝えたいことがもっと相手に伝わるのです。
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